#102 2026年10月20日 30分

「運が悪かった」で片づけていいのは、どこまでか——マネジメントの責任範囲を切り分ける:君主論⑨

君主論シリーズ⑨

上司が突然変わる。会社が買収される。担当していた市場がなくなる。業界の構造がガラッと変わる。自分の意志とは無関係に、外から降ってくる力——マキャヴェッリはこれを「フォルトゥナ」と呼びました。

一方で、判断力、関係資本、スキル、知識、チームの信頼——マネージャーが磨けるすべてのものを「ヴィルトゥ」と呼びます。英語の"virtue"(美徳)とは違い、「善い人かどうか」ではなく「機能する人かどうか」を指す言葉です。

一言で言えば、フォルトゥナは「与件」、ヴィルトゥは「蓄積」。 この二つは別のレイヤーにあります。与件を嘆いても変わらない。蓄積は今日からできる。

今回のエピソードで扱いたいのは、この線引きです。うまくいかなかったとき、どこまでが「運が悪かった」で、どこからが「自分の準備不足」なのか。ここを混ぜたままにしていると、二つの失敗が起きます。全部を運のせいにすれば何も積み上がらない。全部を自分のせいにすれば潰れます。コントロールできなかった半分は嘆いていい。コントロールできた半分だけ、正直に問い直す。

サムネ画像:フランチェスコ・サルヴィアーティ(1510–1563年)〈カイロス〉


参考書籍

  • マキアヴェッリ『君主論』河島英昭 訳(岩波文庫、1998年) ISBN 978-4-00-340031-9河島英昭による定番の新訳。本シリーズが底本として参照する原典。岩波書店 公式:⁠https://www.iwanami.co.jp/book/b248711.html⁠
  • 鹿子生浩輝『マキァヴェッリ ――『君主論』をよむ』(岩波新書、2019年) ISBN 978-4-00-431779-1『君主論』を時代背景と原典に即して読み解く入門書。ヴィルトゥ、第7章のスフォルツァとチェーザレの対比、第8章のアガトクレス論を扱う本エピソードの副読本に最適。岩波書店 公式:⁠https://www.iwanami.co.jp/book/b452029.html


番組で取り上げた書籍紹介

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